2011年10月19日水曜日

平成10年・二次試験-機械・制御【問1】


三相誘導電動機は、全電圧始動すると定格電流の数倍の始動電流が流れ、配電系統の電圧が急激に低下し、保護継電器の誤動作をまねいたり、機器の正常な運転を阻害するおそれがある。このため、比較的容量の大きい誘導電動機は、始動電流を抑制する各種始動方式を採用している。
三相かご形誘導電動機の始動方法について、最近主に使用されている方式を4つ挙げ、その概要を説明せよ。



【ポイント】
 全電圧始動電流は一般に定格電流の4~8倍程度の値となるため、電源容量が小さい場合、始動電流を制限する必要があります。
 また、始動時の過大なトルクにより負荷に与える機械的衝撃を抑える意味でも、始動トルクを下げて始動を行わなければならない場合もあります。
 なお、内線規程(3305-2三相誘導電動機の始動装置)では、定格出力が3.7kWを超える低圧三相誘導電動機で配線に著しい電圧変動を与えるものについて、始動装置の使用を義務付けています。


【解答】
(1)スターデルタ始動法
固定子巻線がΔ結線の電動機を、始動時のみY結線に切り替える方式。
長所:装置が簡単で安価である。
短所:始動トルクが全電圧始動の1/3になる。Y結線からΔ結線への切り替えの際に、大きな突入電流が流れる。
(2)リアクトル始動法
電動機端子と電源との間に始動リアクトルを挿入して始動し、加速終了後に始動リアクトルを短絡し定常運転状態に入る方式。
長所:始動中の最大トルクは、減電圧始動法の中で最も大きい。このため、負荷トルクが回転速度の二乗に比例するもの(ファン、ポンプ類)の始動に適している。
短所:始動電流の減り方に対して始動トルクの減少度合いが大きいため、始動開始時のトルクが小さい。
(3)始動補償器始動法
始動補償器とよばれる三相単巻変圧器により、始動電圧を下げて始動する方式。
長所:リアクトル始動と比べて、小さな始動電流で、大きな始動トルクを発生することが可能である。
短所:全電圧切替の時に大きな突入電流が流れるおそれがあるため、コンドルファ始動器が必要となり、設備が大型で高価となる。
(4)一次抵抗始動法
リアクトル始動のリアクトルの代わりに抵抗を使用する方式。

長所:始動中の最大トルクが大きい。
短所:抵抗器の熱損失が大きい。

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