火力発電所の大容量タービン発電機に採用される水素冷却方式に関する次の問について概要を述べよ。 (1)水素冷却方式が採用される理由。 (2)水素冷却方式において安全上留意すべき事項。 (3)発電機に付属される密封油装置の設置目的と密封方式 |
【解答】
(1)水素冷却方式が採用される理由
火力用タービン発電機の殆どは2極の高速機であり、回転速度は50[Hz]では3,000[min-1]、60[Hz]では3,600[min-1]である。これは、回転速度が高速のほうがタービン効率が良く小型となるためである。このことから火力用タービンは風損による効率低下が問題となる。
①水素の密度(0.0898)は空気の密度(1.2929)と比べて約7[%]と小さく軽いため、通風損失や回転子摩擦損が空気に比べて10[%]程度に軽減される。これにより効率が約1〜2[%]向上する。
②水素の比熱(14.191)は空気の比熱(1.006)の約14倍であるため冷却効果が高い。
③水素は不活性であるため絶縁物の劣化が少ない。
④発電機内で火花が生じても酸素がないため燃焼しない。
⑤コロナ発生電圧が高いため絶縁物の劣化が少ない。
※コロナ放電の中では電子が陽極に引付けられて加速し、超高速になって衝突した空気の分子 から次々と電子を放出させることによりイオン化させる。
ア オゾン(O3)を発生する作用があるが、オゾンは強い酸化力を持つ気体なため、絶縁物を除々に酸化して劣化させる。
イ 高速の 電子やイオンは絶縁物に衝突して表面を削る。
ウコロナによる発熱のため絶縁物が劣化する。
これらの複合作用によって絶縁は除々に劣化して、ついには 絶縁破壊し、火花放電を起こす。
(2)水素冷却方式において安全上留意すべき事項。
水素は空気と混合した場合、水素の容積比率が10〜70[%]の範囲で、爆発性を示す。
電気設備技術基準第48条では、発電機内の水素純度が85[%]以下に低下した場合にこれを警報する装置を設けることとなっており、一般には約90[%]以上となるように運転される。
また、発電機内の水素漏洩管理にも留意し、かつ発電機及び管類は水素が大気圧において爆発する場合に生ずる圧力に耐えるものとすることが必要である。
(3)密封油装置の設置目的
発電機内の水素を密封する目的で設置される。
密封方式としては、
密封油を発電機内ガス圧より70[kPa]程度高い圧力で供給し、この油を密封リングのなかの小穴を通って密封リングの隙間に流れこませて軸にそって空気側及び水素側に押し出し、軸と密封リングの間に油膜を作って密封する。
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