2011年10月18日火曜日

平成16年・二次試験-電力・管理【問3】


 一般水力発電所の反動水車の水力的振動について、代表的な三つの例を挙げ、その発生原因と対策を簡潔に説明せよ。



【解答】
(1)吸出し管の旋回流による振動
反動水車のランナから流出する水の方向は,正規の運転状態ではほぼ軸方向に向いているが,それより負荷が大きいときは回転と逆方向の旋回成分をもって流出し,負荷が小さいときは回転と同方向の旋回成分をもって流出する。このため,吸出し管中心付近には,ある境界をもった旋回流を生じ,押込み水圧が少ないときは,その中心部は低圧となって空洞を形成する。この渦心は過負荷においては比較的安定している場合が多いが,部分負荷においては,竜巻状となって吸出し管内を振れ回り,振動の原因となる。
対策としては,吸出し管に吸気管を取り付けたり,吸出し管に流水方向フィンを取り付ける。

(2)キャビテーションによる振動
キャビテーションは流水翼中のある点の圧力が,そのときの水温における飽和蒸気圧以下になるとき,その部分の水が蒸発して水蒸気となり,流水中に微細な気泡を発生し,その気泡が崩壊する現象のことである。キャビテーションの発生が著しい場合には騒音や振動が起こり,この振動は負荷の状況,吸出し管の構造・吸出し高さなどの影響を受けて振幅が増減し,機器・建屋にその振動が伝わり損傷を与えることがある。このような現象は特に部分負荷運転時に生じる。
対策としては,吸出し管に吸気管を取り付けたり,ランナのベーン形状を修正したりする。また,同様なキャビテーションによる振動はガイドベーンでも発生する。

(3)カルマン渦による振動
カルマン渦は流水中に円柱や板をおいた場合に,その後流に比較的規則正しく発生する渦のことであるが,この渦が発生すると,円柱あるいは板は流れと直角方向の強い交番力を受けることになる。フランシス水車及びプロペラ水車のランナベーン出口縁に発生するカルマン渦の周波数が、ランナベーンの固有周波数に近いときは共振して音響を発し,共振応力によりランナベーンなどの疲労破壊を生じることがある。
対策としては,ランナベーン出口縁の形状を非対称にする方法等がある。

(4)ガイドベーンとランナベーンの相互干渉による振動
回転するランナベーンがガイドベーンを通過するごとに相互干渉による小さな水圧脈動が生じるが,ガイドベーンとランナベーンの枚数の差が2 枚以内のときには,この水圧脈動が重畳して大きな水圧脈動となり,振動が異常に大きくなるような現象が発生し,水圧管や発電所内の配管あるいは床面と共振を起こすことがある。
対策としては,設計段階でガイドベーンとランナベーンの枚数の差を3 枚以上にする方法や,ガイドベーンとランナベーン間の距離を大きくする方法等がある。

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