2011年10月18日火曜日

平成16年・二次試験-電力・管理【問2】


 電力系統用の遮断器における代表的な次の四種の電流遮断条件のうち、三つを選んで、遮断時に発生する現象、遮断責務を説明せよ。
(1)端子短絡故障遮断
(2)近距離線路故障遮断
(3)進み小電流遮断
(4)遅れ小電流遮断



【解答】
(1)端子短絡故障遮断
遮断器の端子近傍で起こった短絡あるいは地絡故障時の電流を遮断する現象であり,遮断電流の大きさの面でいうと,系統の短絡・地絡故障遮断のうちもっとも過酷な条件になる。端子短絡故障では,電流遮断後に遮断器極間の電圧(過渡回復電圧)は電源電圧波高値に向けて回復するが,遮断器の周辺回路のリアクタンス分やコンデンサ分があるため,実際の過渡回復電圧は電源電圧の波高値付近に振動成分が重畳された波形となる。

(2)近距離線路故障遮断
遮断器に近く,およそ数〔km〕から10〔km〕位までの範囲の距離で起こった線路故障(通常は一線地絡を対象とする)時の電流を遮断する現象である。
近距離線路故障電流遮断時には,消弧直後に遮断器の線路側端子から故障点までの線路上に残留した電荷が,開放状態にある遮断器線路側端子と地絡点との間の線路上で往復反射現象を起こすため,遮断器極間には電源電圧のほか,この往復反射現象による三角波形の電圧が印加される。このようにして発生した過渡回復電圧の,殊に初期の部分は立ち上がりが急峻であり,遮断器極間の絶縁回復速度との競合という面からみて遮断条件は非常に厳しいものになる。

(3)進み小電流遮断
無負荷の送電線の電源側端子やコンデンサ回路に流れるような進相電流を遮断する現象である。遮断器が電流零点で消弧すると,線路側の電極には系統電圧の波高値に相当する電位が残留する。他方,遮断器の電源側の電極の電位は(系統電圧に従って)正弦波形で変わっていく。したがって,両電極間の電位差(極間電圧)は消弧後半サイクルにおいて波高値の2 倍となるので,これに耐える絶縁耐力の回復が求められる。これに近い時点で遮断器の極間絶縁の破壊が生じてアークが再点弧すると非常に高い過渡異常電圧が発生することがある。

(4)遅れ小電流遮断
無負荷の変圧器励磁電流のような遅れ小電流を遮断する現象をいう。空気遮断器のようにアークを強制的に遮断する遮断器などで,電流の零点以前にアークが消弧されて電流が遮断される(電流裁断現象)と,変圧器に蓄積されたエネルギーが変圧器側の対地容量を通して充放電を行うため,振動性の過電圧が発生し,遮断器の極間に印加される。この過電圧に対し,遮断器極間の絶縁回復速度が遅いと再発弧と電流の裁断が繰り返され,十分な極間耐圧が回復してはじめて電流の遮断が完了する。

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