2011年10月18日火曜日

平成15年・二次試験-電力・管理【問6】


次に示す(1)から(3)までの発電設備について、使用する燃料又は利用するエネルギーとしての特性を踏まえ、我が国におけるエネルギーセキュリティの確保と地球環境保全の観点から、原子力発電の例にならって、特徴、現状及び課題について述べよ。
(1)LNG火力発電
(2)石炭火力発電及び関連技術
(3)太陽光発電及び風力発電

(例)原子力発電
(特徴)
原子力発電は、発電過程では地球温暖化ガスであるCO2を発生しないので、環境保全に寄与するとともに、燃料であるウラン資源の供給安定性に優れ、価格も高騰する可能性は低いことなど、エネルギーセキュリティ上優れたエネルギー源である。
(現状)・・・略
(課題)・・・略


【解答】
(1)LNG火力発電
(特徴)
LNG 火力発電の燃料である天然ガスは、ガス田の開発が石油ほど進んでおらず未開発埋蔵量は大きいといわれている。我が国への供給源は東南アジアを中心に特定地域への依存が高いものの、供給源が中東地域に集中している石油に比べると安定供給が脅かされるリスクは低く、エネルギーセキュリティの観点から優れている。また、キロワット時当たりのCO2発生量や汚染物質発生量も石炭に比べて少なく、SOX等の大気汚染物質もほとんどないので、他の化石燃料に比較して地球環境保全の観点からも優れている。
(現状)
優れた環境特性や出力調整機能を有することから需要地に近接した都市型電源として、また、ピーク及びミドル供給力を担う電源、特にコンバインドサイクル発電として開発が進み、既に相当量が導入されている。また、燃焼時のNOXの発生があるが、排煙脱硝技術の進歩により十分な対策がなされている。
(課題)
他の火力発電と同様に、エネルギー高効率利用の観点から高効率化の取組みを継続するとともに、天然ガス田の開発やインフラの整備を通じて、長期的に安定した供給源を確保する必要がある。他方、燃料の引き取り保障をしなければならない等、燃料調達の自由度が少ない問題もある。

(2) 石炭火力発電及び関連技術
(特徴)
燃料である石炭は、賦存量の膨大さ、賦存地域の分布を考慮すると、他の化石燃料に比べて供給安定性が高く、安価であることからエネルギーセキュリティの面では優位であるといわれている。しかし、CO2 の排出原単位が高く、石炭灰や大気汚染物質を多く発生するので、これらの対策が必要となるなど、地球環境保全の面からは制約が多い。
(現状)
輸入炭を燃料とする大規模発電所も導入されており、大気汚染物質(SOX、NOX 等)の排出抑制技術も確立されている。現在、ベース電源として原子力発電に並ぶ発電電力量を担っており、今後も安定した供給力として期待されている。
(課題)
発電に伴うCO2 原単位を低減するための技術開発が必要であり、発電効率向上のため蒸気条件(温度、圧力)の向上、加圧流動床や石炭ガス化による複合発電の開発などが進められている。また、石炭灰の有効利用を図ることも重要な課題である。

(3) 太陽光発電及び風力発電
(特徴)
太陽光、風力などの自然エネルギー利用は、環境負荷が小さく、地球環境保全対策上優れた方式である。また、地球上の広い範囲で利用でき、化石燃料への依存を減らすことができる観点からエネルギーセキュリティ上も有利であるが、天候に左右されることやエネルギー密度が低いことなど、利用に当たっての課題も多い。
(現状)
我が国においても、補助政策による一般家庭への普及促進や公共性の高い施設への積極的な導入など、国を中心に技術開発や導入促進制度による普及が図られ、2000 年度末で全国で約330〔MW〕の太陽光発電と、約150〔MW〕の風力発電の施設が設置されている。
(課題)
太陽光発電及び風力発電は、自然エネルギー利用として期待され、既に発電設備の実用化が進んでいるが、エネルギー密度が低くコストが割高であるため、大量に普及するに当たっては課題が多い。発電コスト低減のための技術開発に取り組む必要がある。また、発電量は自然条件に左右されるため、分散型の電力貯蔵設備との組合せ等、運用面からの取組みも必要である。

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